Google DeepMindなど機械学習ベースのデータ駆動型予測モデル(Precipitation Nowcasting)が急速に広まっており、数値モデルによる予測に匹敵する精度を得られるようになっています。一方で、初期値依存性を考慮したアンサンブル予報は難しく、今後のさらなる研究が求められます。ECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)では確率的機械学習予報システムを構築するプロジェクトが開始されました(プロジェクトへの参加者を募集しているそうです)。
気象庁では、降水ナウキャストおよび降水短時間予報が実施されており、警報・注意報や大雨・洪水警報の危険度分布と併せて利用することにより、避難行動や災害対策に活用されています。降水ナウキャストでは、5分間隔で発表され、1時間先までの5分毎の降水の強さを1km四方の細かさで予報します。降水ナウキャストの予測には、レーダー観測、アメダス、高層観測データで得られた降水特性から、予測開始時の降水域の移動の状態がその先も変化しないと仮定して、降水の強さに発達・衰弱の傾向を加味して、降水の分布を移動させ、60分先までの降水の強さの分布を計算しています。この手法は、新たに発生する降水域等を予測に反映することはできませんが、短時間の予測では比較的高い精度の予測を得ることができます。降水ナウキャスト、降水短時間予報ともに、地形の影響等によって降水が発達・衰弱する効果が含められています。降水短時間予報では、6時間先までと7時間から15時間先までの予測が行われます。まず、解析雨量から得られた降水域の移動速度から6時間先までの降水分布を作成します。予測の後半には地形の効果や降水の時間変化特性を考慮した数値予報による予測を加味しています。予報時間が長くなると精度が低下するため、常に最新の予報を得ることが重要になります (基本的な方法はWMOによるナウキャスティング技術ガイドラインにも記載)。7時間先から15時間先までの予測手法は6時間先までの予測手法と異なり、メソモデル(MSM)と局地モデル(LFM)を統計的に処理した結果を組み合わせて降水量分布を予測します。2014年から国土交通省の X バンド MP レーダネットワーク(XRAIN)等を利用した「高解像度降水ナウキャスト」が運用されています。
https://www.ecmwf.int/en/about/media-centre/news/2023/how-ai-models-are-transforming-weather-forecasting-showcase-data
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/kotan_nowcast.html
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/highres_nowcast.html
https://www.data.jma.go.jp/suishin/jyouhou/pdf/398.pdf
https://library.wmo.int/records/item/55666-guidelines-for-nowcasting-techniques