不確実性を定量化して気候予測精を向上させるためには、膨大な気候モデル実験を実施し、出力データを解析、評価する必要があります。しかし、データが膨大になるに従い、パターンが複雑化して検出しにくくなり、人が介在する従来の解析手法では対応が難しくなります。この問題に対処するために、人に代わって機械学習がこれらの研究業務を実施できるようになるかもしれません。この論文では、気候モデルエミュレータ、解析手法、さらには説明可能AIを統合した新しい機械学習手法への展望が描かれています。
有料論文ですので詳細は記載できませんが、近年の急激なAIの進化を考慮すると、近い将来に気候研究の担い手が人からAIに移っていく可能性は十分にあると思われます。進化した説明可能AIと生成系AIを活用することにより、気候変動のメカニズムや将来予測を誰にでも簡単に分かりやすく説明することが可能になるため、気象・気候関係のほとんどの研究者や解説者は必要とされなくなるでしょう。本論文の展望通りならば、今後は機械学習システムの構築に向けて、大気科学の知識だけでなく、AIの知識やデータサイエンティストとしての能力を持つ人が求められると思われます。
Eyring, V., Collins, W.D., Gentine, P. et al. Pushing the frontiers in climate modelling and analysis with machine learning. Nat. Clim. Chang. 14, 916–928 (2024). https://doi.org/10.1038/s41558-024-02095-y