将来気候の評価

将来のデータが利用できないことを考えると、観測ダウンスケーリング アルゴリズムでは将来の気候における直接評価は不可能です。 一部の研究では、経験的モデルからの対象変数の気候変動シグナルを 全球気候モデル(GCM) または 地域気候モデル(RCM) のアンサンブルの気候変動シグナルと比較することにより、経験的アルゴリズムの将来の分布外パフォーマンスを評価しています。 この比較の基礎は、GCM とダウンスケールされた気候信号の両方がホスト GCM の広範な大気パターンに従い、したがってダウンスケーリングのわずかな偏差のみが予想されることを前提としています。 この仮定には物理原理における強力な基礎が欠けているため、この方法は低レベルの将来のパフォーマンス評価のみを提供する必要があります。 あるいは、セクション 6a で説明した「完全モデル」/「疑似現実」実験は、観測ダウンスケーリング アルゴリズムの将来の気候シナリオに対する正規の分布外テストの最良の代用として機能します。 一方で、RCM エミュレータの場合、将来の気候変動シグナルの直接評価が可能です。 ここでは、RCM エミュレーターからのダウンスケールされた出力を、トレーニングでは使用されなかったグラウンド トゥルース シミュレーションに対して評価できます。

コメント:全球気候モデルの気候変動シグナルは必ずしもダウンスケーリングした結果と対応するとは限りません。特に降水は局地地形の影響を強く受けるため、ダウンスケーリング時に気候変動シグナルが親モデルと大きく異なる場合があります。比較的気候変動パターンが反映されやすい気温も、極端現象(例えば、台風の通過に伴う局地的なフェーンの影響など)は評価が難しくなると想定されます。RCM エミュレーターでは経験的ダウンスケーリングのバイアス補正能力までは評価できないため、エミュレーターとしての能力評価に限定されます。そもそも経験的ダウンスケーリングでは数値モデルのように厳密に物理に従う手法ではないため、いくつかの前提に基づいて評価ぜざるを得ません。一方で、物理に厳密ではないからといって、経験的手法を全て否定することはできないと思います(実際に、既存の手法では得られない極めて高いパフォーマンスを示しています)。基本的に、ダウンスケーリングの全てを経験的手法で置き換えられる訳ではなく、何がどこまで適用可能か、能力を正確に見極める必要があります。

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