ML ベースの経験的ダウンスケーリング アルゴリズムの最も重要な利点は、RCM と比較した計算効率にあります。 したがって、RCM-GCM マトリックス全体または大規模な初期条件アンサンブルに広く適用することがより簡単になり、将来の気候予測における初期、モデル、シナリオの不確実性の寄与についての理解を向上させることができます。 さらに、局所規模の極端な現象の不確実性を正確に評価するには、対流を許容する RCM の大規模なアンサンブルが必要です。 ただし、GAN などの最新の ML アルゴリズムは有望な代替手段を提供し、RCM の数分の 1 の計算コストで非常に高い空間解像度 (<5km) で RCM をエミュレートできるようになりました。現在、ML には、GCM のような将来のシミュレーションを生成したり、物理ベースの RCM と同様に物理的発見に直接貢献したりする機能がありません。 ML を使用して慎重に設計されたトレーニング アプローチは、既存の CORDEX フレームワークとの連携を強化することと並行して、気候ダウンスケーリングの導入と信頼性を向上させるための有望な道筋を提供します。
コメント:大気カオスによる初期値鋭敏性について、全球気候モデル(GCM)や地域気候モデル(RCM)で予測の不確実性を評価することが可能ですが、機械学習手法単独では基本的に評価困難です。したがって、不確実性を評価するためには、GCMやRCM のアンサンブル予測値を機械学習に適用する必要があります*。機械学習は、GCMやRCM をさらに高解像度化(ダウンスケーリング)して不確実性を評価したい場合に極めて効果的に機能します。一方で、GCMやRCM のように感度実験を実施したり、物理的考察がしにくい面があります。今後は、物理的・統計的制約を加えて解釈可能性を高めると同時に、数値モデルとの連携を強化して予測結果の信頼性を向上させることが課題になると思われます。
*ナウキャスティングも同様で、予測時間が3時間を超える場合は数値予報モデルとの連携(ダウンスケーリング)によるアンサンブル予測(確率予報)が必須になると想定されます。いくつかの事例では機械学習(単独)の予測精度が数値予報(アンサンブル予報)を上回ることもあると思われますが、大気のカオス性を考慮すると全体的にはアンサンブル予報の精度が良くなるでしょう。結果的に、水災害リスク評価が向上し、対策の効果を高めることができると考えられます。