最近、気象、気候予測のための機械学習手法として、グラフニューラルネットワーク(GNN)が注目されています。ここでのグラフとは、評価対象(ノード:点)と評価対象の間の関係性(エッジ:線)で表現されるデータ構造を示しています。従来型の深層学習では、画像などデータの集まりを対象としてきましたが、例えばSNSでの人間関係、人口の流れ、物流・交通ネットワークなどデータ間のつながりを扱う複雑な問題については対応が困難でした。そこで、グラフ理論を取り込んで、より多くの現実的な問題に対処するために、GNN が発展してきました。最近、サイエンス誌にGNNを用いた気象予測システムが紹介され話題になりました。メッシュ構造を持つGNNは、数値モデル研究者から直感的に理解しやすい側面があり、物理的制約を反映させやすいことから、数値モデルの代替手法の有力な候補になると想定されます。問題点として、グラフ構造が複雑になることにより解釈可能性が低下することが挙げられます。また、論文の結果を見ると、推定値に不自然な点があるなど、まだ十分に使いこなせておらず、開発の初期段階である印象を強く受けます。しかし、研究が広まり手法が急速に発展することにより、数値モデルの役割の一部を担うことになると想定されます。今後の発展に大いに期待しています。
Lam, Remi, et al. “Learning skillful medium-range global weather forecasting.” Science 382.6677 (2023): 1416-1421.