高解像度降水ナウキャスト

気象庁では、2014 年 8 月より、解像度250m, 5分ごと、30分先までの降水を予報する高解像度降水ナウキャストの運用を開始しました。日本全国20箇所にあるレーダー雨量観測(ドップラーレーダー観測網)の解像度を向上するために機器が更新され、さらに、気象庁・国土交通省・地方自治体が保有する全国の雨量計のデータ、ウィンドプロファイラやラジオゾンデの高層観測データ、国土交通省レーダ雨量計のデータ(XRAIN)も活用し、降水域の内部を立体的に解析しています。従来の降水ナウキャストが2次元で予測するのに対し、高解像度降水ナウキャストでは、予測前半では3次元的に降水分布を追跡する手法で、予測後半にかけて気温や湿度等の分布に基づいて雨粒の発生や落下等を計算する対流予測モデルを用いて予測しています。対流予測モデルにより、積乱雲の発生の予測が可能になりました。観測降水との比較から、以前よりも高い精度で降水を予測できることが示されています。「急な強い雨」については、30 分間積算降水量が 50mm 以上の捕捉率は 7 割であるが、空振りも多い結果になっています。積乱雲の発生予測では、強雨に伴う下降気流、地上気温・水蒸気量の時間変化、弧状微弱エコーの交差を参照し、鉛直 1 次元対流予測モデルで降水量を予測しています。島嶼及び山岳ではアメダス観測点が少なく、山岳では微弱エコーの検出も難しいことから、捕捉率が 1 割以下と低く、さらに改善が必要です。

実際に高解像度ナウキャストで降水の時間変化を見てみると、3次元実況補外の影響が強く、降水分布の時間変化特性としては不自然に見えます。一方で、機械学習によるAIナウキャストでは、見た目では降水セルの時間変化に不自然さは見られません。ただし、降水分布の強弱が小さく全体的にやや平滑化されているように見られます。いずれにせよ、AI降水ナウキャストに代替されるには、既存の手法より精度が高くなることが求められます。気象庁の手法は、降水に不自然さはありますが降水の時間変化特性をよく捉えており、高い予測精度を得られていると推測されます。既存の手法とAI手法が融合することで、降水予測精度をさらに改善できるかもしれません。

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/highres_nowcast.html
https://www.data.jma.go.jp/suishin/jyouhou/pdf/536.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/yohkens/20/chapter4.pdf
https://www.nature.com/articles/s41586-021-03854-z

カテゴリー: 機械学習, 気象予報 パーマリンク

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